米国の小さな無料ライブラリー

昨年秋ニューヨーク市で起きた抗議運動「ウォール街を占拠せよ(OWS: Occupy Wall Street)」では、人々が自由に資料を持ち去ったり、寄付したりすることができるPeople’s Library」が作られましたが(参照:「ウォール街を占拠せよ」People’s Library)、米国ではここ数年各地に、同じようなコンセプトをもって個人が設置する小さな無料図書館が出現しています。すべての試みが順調に成功しているというわけにはいきませんが、地域社会の連帯を強めるものとしての共感を呼んでいるように思われます。

1. Little Free Library

2009年、米国ウィスコンシン州ハドソン市に住むTodd Bol氏は、元教師で愛読家だった亡き母を称えるために、防水を施した箱を作って本を入れ、家の前に立てた棒杭の上に設置した。箱には「Free Book Exchange」のサインを付け、中の本を自由に持っていったり、返したりすよう勧めたところ、近所の人々にとても喜ばれた。そのうち自分も同じような小さなライブラリーを作りたいと考える人々が訪れるようになったため、彼はウィスコンシン大学継続教育アウトリーチプログラム・マネージャーの友人と協力し、「Take a Book, Return a Book」を基本コンセプトとする「Little Free Library」拡大運動を広げていくことにした。「Little Free Library」は通常大型の郵便受け程度の大きさで、家、学校、納屋、ポストなど様々の形をしており、現在少なくとも28の州において、家の前の芝生や、ヘルスセンター、コーヒーショップ、商店の前や、バス停などで見受けることができる。ウィスコンシン州では、刑務所の囚人達も参加し始めたようである。運動は米国だけでなく、英国、ドイツ、オーストラリア、ガーナ、アフガニスタンなどの諸外国にも広がっており、NBC放送によれば、それ以外にも興味を示している国は1ダースを超える。かのAndrew Carnegie氏は2,509の図書館を作ったが、それを超える2,510以上のLittle Free Libraryを世界中に設置することが目標とされている。大切なのは、「Little Free Library」は単に本を交換するだけの場ではなく、話をすることもなかった隣人たちに互いに知り合う機会を与えることによって、地域の連帯感を育むことであるとBol氏は語っている。Webサイトlittlefreelibrary.orgでは、ライブラリーの作り方に関する助言を提供し、キット(100ドル~)も販売する。寄せられた寄付金は、貧しいコミュニティーや開発途上国での小さなライブラリー作りに使われる。

 2. コーナーライブラリー

アーティストのColin McMullan氏は、子ども時代の自己を(再)開拓しようという人々のグループKIDSKindness and Imagination Development Society)によるプロジェクトとして、「コーナーライブラリー」の設置を20074月に開始した。コネティカット州ニューヘブン市のダウンタウンに、テストとして開設された最初の「コーナーライブラリー」は、犬小屋(高さは子供の背丈)ほどの大きさで、寄贈された本、雑誌、パンフレット、CDDVD、地図などが数多く置かれた。その地で6か月住民にサービスを提供した後、20114月に、この「コーナーライブラリー」はニューヨーク市のブルックリン区に移転した。ライブラリーのドアには「ようこそ!このライブラリーは、私たち皆が深く関心を持つ地元の資源、論点、イベント、個人的な問題に関する情報の発表・共有を助成することを目指しています。」と書かれている。運営は年中無休の自主管理システムが取られ、利用者したい人は、ボランティアのライブラリアンとコンタクトを取って、ライブラリーカードとドアの鍵のコードを受け取っておく。全ての資料に紙片がはさまっているので、利用者はそれに自分の名前と借りた日を書き入れ、ライブラリー内に置かれた箱に入れておくだけでよい。貸出期間は2週間である。資料を寄贈する場合は、持ち込んでライブラリアンに処理してもらうか、自分で処理して適切だと思う棚に置くこともできる。資料は出版本だけでなく、自分が書いたり作成した本、マンガ、自費出版新聞などの印刷物、CDDVDなどその他のメディアなどで、他の人たちと共有したいものはすべてコレクションになる。ブルックリン区の「コーナーライブラリー」利用登録者は現在約50名おり、コミュニティーからの高い関心を引き付けているとのことである。KIDSはニューヨーク市にテスト的にいくつかの場所に短期間設置したが、現在は市の規則に従った恒久的な「コーナーライブラリー」作りを、Manhattan区から開始しようとしており、世界中に設置すべく努力しているところである。コーナーライブラリアンになる人々が求められている。

 3. ミニ・コミュニティーライブラリー

建築家で愛読家でもあるJohn Locke氏は、ニューヨーク市で使われなくなった電話ボックスを、ミニ・コミュニティーライブラリーに転身させるというプロジェクトを開始した。「Little Free Library」と同様、隣人が集まって良い本を共有することをコンセプトとし、これまでに2台の電話ボックスがライブラリーにされた。人通りの少ない場所に置かれた1台目では、数日後にはすべての本が持ち去られ、追加した本もまた数日後にはなくなり、その2週間後には棚も盗まれてしまうという結果に終わった。そこで2台目は地下道入り口の人目に立つ交差点に置いたところ、しばらくの間は本を持ち去るだけでなく、置いていく人も現れたが、6週間後には1台目と同じ運命をたどった。Locke氏は、電話ボックスにはライブラリーの目的がわかるように“共有する”や“借りる”といった簡単な言葉を貼り、今後もこの実験を続けるつもりでいる。次の段階としては、店頭の電話ボックスをライブラリーに転換し、その維持に協力を仰ぐために、近隣の地元企業と接触をしているそうである。ただし、このプロジェクトはニューヨーク市の承認を得てないとみられるので今後難航する可能性もありそうだ。

 (ライブラリーの写真は以下のWebサイトで見られます)

Little Free Library

Using books to build community http://dailynightly.msnbc.msn.com/_news/2012/03/10/10634425-using-books-to-build-community

‘Little Free Libraries’ Hope For Lending Revolution/ by Kristen Durst http://www.npr.org/2012/03/07/148170088/little-free-libraries-hope-to-spark-lending-revolution

Little Free Libraries are taking root on lawns
http://www.libraryjournal.com/lj/home/891507-264/in_pursuit_of_andrew_carnegie.html.csp

コーナーライブラリー

Homegrown Libraries
http://www.pw.org/content/homegrown_libraries_0?cmnt_all=1

 The Corner Libraries
http://www.emceecm.com/libraries.html

 The K.I.D.S. Corner Library
http://kidscornerlibrary.tumblr.com/

ミニ・コミュニティーライブラリー

NYC Phone Booths Upcycled into Mini-Libraries
http://earth911.com/news/2012/03/07/new-york-city-phone-booths-upcycled-into-communal-libraries-john-locke/

Architect Turns a NYC Phone Booth into a Mini Library
http://www.bangstyle.com/2012/02/phone-booth-library-new-york/

How New YorkPay Phones Became Guerrilla Libraries
http://www.theatlanticcities.com/arts-and-lifestyle/2012/02/how-new-york-pay-phones-became-guerrilla-libraries/1288/