米国公共図書館の睡眠禁止規則

アイオワ州Iowa Cityの図書館理事会(Board of Trustees)が、図書館内での睡眠禁止を、2013年1月に決定しました。日本にも千代田区立図書館のように、居眠り禁止を館則に明記している図書館はありますが、米国では、睡眠を明確に禁止している図書館は少数派とは言え、珍しくはありません。しかし、米国図書館協会(American Library Association, ALA)はこの件に関する調査はしておらず、その数は不明です。図書館で眠る利用者に対しては、他の利用者からの批判もあり、公共図書館の職員を悩ます重大な問題のひとつとなっています。禁止すべきかどうか、居眠り程度でも禁止すべきか、などをめぐって対立する意見があり、対応方法も図書館によりさまざまに異なります。

1. Iowa City公共図書館(アイオワ州)

2013年の1月初め、人口約69,000人を抱えるIowa Cityの公共図書館職員は、利用者からの苦情があったことから、すべての来館者にとって図書館をより快適な場所にするために、館内での睡眠を全般的に禁止するよう提言した。それを受けて、図書館理事会は1月25日、行動規範に「睡眠禁止」を加えることを6対1で決定した。図書館長は、昨年来、館内での睡眠、とりわけ大きないびきをかいたり、複数の椅子を占領して眠ることは、常軌を逸した行為であると不快感を抱く地域住民の声が増大し、図書館利用にも悪影響が出ていること、そして眠るために図書館を利用するのはホームレスとは限らず、さまざまな人々が眠っていると指摘した。図書館理事のひとりは、睡眠禁止はホームレスとの戦いを目指しているのではなく、眠っている人がいない裁判所や公共建物と同じように、図書館も扱われるべきであると述べた。他方、このような規制は、日中行く場所のないホームレスの人々をターゲットにしており、図書館のイメージを汚すとして反対する住民もいる。睡眠禁止に反対票を投じた理事は、眠ることを常軌を逸した行為と決めつけるべきではないと主張している。理事会の決定は、図書館職員に適切な訓練を与えた後直ちに施行され、付き添いのいる子どもを除くすべての利用者に適用される。これまではいびきをかかない限り、居眠りは許されてきたが、今後は、職員が眠っている人に近づいて注意を促し、それが何度も繰り返される場合、退去を求めることになる。教科書を机に置いて居眠りをしようが、椅子にぐったりと座って頭にコートをかけて眠ろうが、誰もが同じ扱いを受けることになる。Iowa City公共図書館では2001年にも職員が居眠り禁止を提言したが、その時は理事会が却下したため、いびきをかいている人にのみ、職員は注意していた。

アイオワ州では、睡眠が他の利用者に迷惑となりがちな大規模公共図書館においてのみ、長年にわたり同様の禁止が実施されてきた。職員が眠っている人を起こして禁止ポリシーに注意を喚起し、再度注意された場合は当日の退去を求められる旨を告げるという方法が一般的である。小規模図書館では、居眠りは問題となっていないようである。

2. 他州の例

1) ワシントン州

Seattle公共図書館は、利用者に対して厳しい規則を制定*していることで知られる。以前から居眠りは禁止されていたが、2009年の規則改定の際には、「横になって眠ること」だけではなく「眠っているように見える(うとうとする)こと」も禁止条項に加えられた。当時、入館者が20%増加し、それにつれて規則違反が増大したことが、その理由とされている。違反者は通常は2~3日、悪質な場合には最大30日間、図書館の利用が禁止される。

*その他の禁止事項例:大声、キーボード強打、はだし、シャツ脱ぎ、悪臭、不潔、指定場所外での飲食、荷物放置、設備の勝手な移動、スケートボード・ローラースケート・スクーター・自転車などの使用

2) ミネソタ州

Minneapolis中央図書館には、コンピューターやオープンスペースを求める貧困者やホームレスが、日々数百名訪れる。彼らには理解を示してきた図書館であるが、その数が増えるにつれ問題が生じてきたため、睡眠とアルコール禁止の規則を厳しく実施することを余儀なくされた。その結果、規則に違反したとして退去を求められた者は、2012年は2011年の2倍以上に当たる1,321名に達した。「アトリウムではきちんと座って目を覚ましていること、という規則を実施する」と警備責任者は語った。

3) カリフォルニア州

(1) Newport Beach図書館

Newport Beach市議会は2012年7月、公共図書館家具の上で眠ったり、横になったりして他の利用者の邪魔になっている人たちを、職員が立ち退かせるのを許可する新しい方針を承認した。Newport Beach図書館副館長は、定期的に図書館にはやって来ては、家具の上で眠ったり横になったりし、注意する職員に向かって「止めさせる権限はお前たちにはない」と言う利用者がいるが、やっとその権限が与えられたと安堵している。その他の禁止事項には、はだし、職員に対する脅迫的な言葉や暴言、個人衛生の欠如、他人への迷惑となる香水・コロンの使用などが含まれる」と語ったが、ホームレスをターゲットにしているとの疑惑は否定した。新方針は中央図書館だけでなく、4つの分館にも適用されている。

(2) Santa Cruz公共図書館の職員は、禁止行動のリストに居眠りを加えようと試みたが、Santa Cruz公共図書館広域行政組織理事会(Santa Cruz Public Libraries Joint Powers Authority Board)は2012年12月、5対4で否決した。睡眠禁止に反対票を投じた理事長は、「皆、心の奥では、特定グループの人たちが不均衡に影響を受けることになると分っている」と述べた。図書館長は、「図書館職員は、書庫で横になったり、テーブルに頭を載せて何時間も眠っている人たちを立ち退かせる明確な権利を求めたものであって、読書中に短時間眠りに落ちた人々を対象にしたのではない。実際、ダウンタウン分館では、1日に何度も長時間眠っている人たちが見受けられる」と語った。また、提案は否決されたが、他の人たちが資料や設備を利用する妨げになっている場合は、眠っている人に退去を求めることはできると主張している。

4) イリノイ州

シカゴ地域には、人の迷惑にならない限り睡眠を許す図書館と、禁止する図書館が混在している。NapervilleのNichols Libraryは、長時間だったり悪影響を及ぼしたりしない限り、眠ることが許される。しかしChicago公共図書館では、他の人に迷惑をかけていない場合でも睡眠は禁止される。眠っている人がいると、職員はそっと触れて起こし、それでも眠り続ける場合は、1日限りの退去を命じる。Joliet公共図書館は、2012年8月に睡眠禁止の方針を見直した結果、維持することを決めた。LombardのHelen Plum Memorial図書館は、他人の迷惑とならない限り、睡眠を許す方向へと規則の変更を考慮中である。

3. 大規模図書館のポリシー

大規模図書館の方が、館内での睡眠が問題となりがちであると言われていることから、米国の最も蔵書数が多い23公共図書館のポリシーを調べてみた(表:23大規模図書館の睡眠禁止規則)。23館中、禁止行為の中に「睡眠」を加えていないのは1館のみである。18館は、行動規範(Code/ Rules of Practice)、規則・規範(Rules and Regulations)、利用者ガイドライン(Patron Guidelines)、行動基準(Standards of Behavior)などの中で、「睡眠」を明確に禁止している。残り4館については、規則等そのものを見つけることができなかった。18館の中でもBoston公共図書館とHouston公共図書館は特に厳しい態度をとっており、前者は「横たわること」、後者は「机に突っ伏すこと」も禁じている。

表:23大規模図書館の睡眠禁止ポリシー

順位 図書館 蔵書数* 禁止
1 Boston公共図書館 MA 19,090,261  睡眠、横たわる
2 New York公共図書館 NY 16,342,365  睡眠
3 Cincinnati & Hamilton郡公共図書館 OH 8,819,759  睡眠
4 Detroit公共図書館 MI 7,070,433  睡眠
5 Los Angeles郡公共図書館 CA 6,795,552  -**
6 Queens区公共図書館 NY 6,544,609  -**
7 Los Angeles公共図書館 CA 6,459,552  睡眠
8 Chicago公共図書館 IL 5,790,289  睡眠
9 San Diego公共図書館 CA 5,535,415  睡眠
10 Dallas公共図書館 TX 4,972,494  睡眠
11 Hennepin郡図書館 MN 4,961,514  -**
12 Cleveland公共図書館 OH 4,273,202  睡眠
13 Brooklyn公共図書館 NY 4,233,304  睡眠
14 King郡図書館システム WA 4,044,907  睡眠
15 Hawaii州公共図書館システム HI 3,776,405  禁止なし
16 Miami-Dade公共図書館システム FL 3,674,651  睡眠
17 Broward郡図書館部門 FL 3,477,312  -**
18 Mid-Continent公共図書館 MO 3,419,516  睡眠
19 Allen郡公共図書館 IN 3,412,830  睡眠
20 Saint Louis公共図書館 MO 3,352,775  睡眠
21 Cuyahoga郡公共図書館 OH 3,252,456  睡眠
22 Buffalo & Erie郡公共図書館 NY 3,211,709  睡眠
23 Houston公共図書館 TX 3,061,773  睡眠、机に突っ伏す

* Public Library Association2011年度統計

**禁止項の“-”は行動規範、規則などが見出されなかったことを意味する。

州名略号: CA(California), FL(Florida), HI(Hawaii), IL(Illinois), IN(Indiana), MA(Massachusetts), MI(Michigan), MN(Minnesota), MO(Missouri), NY(New York), OH(Ohio), TX(Texas), WA(Washington)

1. Iowa City公共図書館

Sleeping Banned At Iowa City Public Library
http://www.press-citizen.com/article/20130125/NEWS01/301250023/Sleeping-banned-C-library

Iowa City Public Library approves sleeping ban/ by Layla Pena
http://www.dailyiowan.com/2013/01/25/Metro/31463.html

Library weighs instituting sleeping ban in the building
http://www.press-citizen.com/apps/pbcs.dll/article?AID=2013301140018&nclick_check=1

2. 他州の例

1) ワシントン州

Two-Year Ban for Nodding Off at Seattle Libraries
http://seattlest.com/2009/05/28/two_year_ban_for_nodding_off_at_sea.php

Welcome to The Seattle Public Library
http://www.spl.org/about-the-library/library-use-policies/rules-of-conduct

2) ミネソタ州

Security getting tougher at downtown Minneapolis library
http://www.startribune.com/local/minneapolis/189750091.html?page=all&prepage=1&refer=y

3) カリフォルニア州

Napping, Swearing, Foul Odors Banned At Newport Beach Libraries
http://losangeles.cbslocal.com/2012/07/12/napping-swearing-foul-odors-banned-at-newport-beach-libraries/

Lounging, poor hygiene grounds for removal from Newport libraries
http://www.ocregister.com/articles/library-363141-city-bike.html

Library board votes down sleeping ban
http://www.santacruzsentinel.com/localnews/ci_22125587/library-board-votes-down-sleeping-ban

4) イリノイ州

Library no longer throws book at snoozers
http://articles.chicagotribune.com/2011-12-02/news/ct-met-library-sleepers-20111202_1_chicago-public-library-nichols-library-chicago-area-libraries

3. 大規模図書館のポリシー

ALA Library Fact Sheet Number 22
http://www.ala.org/tools/libfactsheets/alalibraryfactsheet22